2014年1月20日月曜日

ぐんまちゃんと円谷英二の申し子たち

 昨年末の上毛新聞。県庁の仕事納めの記事で、県知事のあいさつをかしこまった姿勢で聞く職員の中に、ちゃっかり「ぐんまちゃん」も混じっている写真が載っていた。
 スーツ姿の真面目そうな人たちと共に整列する異形のゆるキャラ「ぐんまちゃん」。白髪混じりのおじさんたちの中、相当な違和感を感じても良さそうなものだが、むしろ、かたくてそっけないイメージのある役所の式典が、和やかでほほえましい自然な場に感じられた。
 
 その一方で、最近の「ゆるキャラブーム」に対して、「いい大人がなんだ」というような批判を込めた曽野綾子さんのコラムを読んだことを思い出した。確かに我々が子供の頃の大人は、こんな「ふざけたこと」?は考えもしなかったし、許しもしなかっただろう。
 もしかすると外国人がこの写真を見たら、現実離れした奇想天外な風景に映るかもしれない。
 しかし、2013年暮れの日本では、いい大人、それも公務員や知事までもが、当たり前のように「着ぐるみ」と一緒にいる。この現象は単に降って湧いたブームではないのかも…。
  
 子供の頃、円谷プロのテレビ番組「快獣ブースカ」が好きだった。人間ともペットとも違う、大人とも子供ともつかない不思議な生き物が、当たり前のように子供達に混じって遊んでいる。

 後で、円谷英二という人は、この「子供達の中に当たり前のように異形の生き物がいる風景」を描くのが夢だったという話を何かで聞いた。ブースカの少し前に作られたテレビ番組「ウルトラQ」の中の「カネゴンの繭」という話が原型らしい。
 私もブースカと一緒に遊びたかった。「近所にブースカが居たらな…」と誰もが思ったはず。しかし、着ぐるみのキャラクターなどフィクションであることは子供でもわかっていたし、当時はテレビの中か、デパートの屋上という限られた空間でしか存在しないものだった。
 
 あの当時、カネゴンやブースカと暗くなるまで野山で遊んでいた金男や大作、メチャ太郎ら子供達の姿が、ぐんまちゃんと一緒に並んでいる背広姿のおじさん達とダブって見える。あれから50年近く‥ みんな自分と同じ50代60代になっているはずだが…。

 んっ? と言うことは、この背広のおじさん達はまさにあの時代の子供達!
 そうか、みんな円谷英二の申し子なんだ。
 
 そう考えると、着ぐるみのキャラクターが現実の県庁職員として当然のように並んでいるこの写真は、かつて1人の男の抱いた夢が、実に半世紀という道のりを経て実現した歴史的な光景かもしれないと思えるのだ。
中島桂一