2015年4月4日土曜日

住宅の「無用の用」

高校に入学して間もなく、漢文の授業で、「無用の用」という老子の言葉を習いました。
「役に立たないように見えるものが、かえって大いに役立つこと」という意味です。
 
 例えば、器といえば、陶器や木、ガラスや紙の茶碗やコップなどを思い浮かべますが、実際に食べ物や飲み物を入れるのに役立っているのは真ん中の空洞部分です。
 普段は意識することもないただの凹みが、実は大切な働きをしているということになります。
 
 住宅にも同じ事が言えます。
 通常、私たちはは柱や床、壁、天井、窓など、目に見えるものだけで住宅を捉えがちです。しかし、人はシロアリやネズミのように柱や壁の中でコソコソと暮らしているわけではありません。
 実際に私たちが暮らしているのは、柱や床壁天井、窓などで作られた空洞部分、つまり室内空間なのです。 


 我々建築業者が基礎をつくり、土台をまわして柱を立て、梁を渡して屋根を掛けているのは「何のため?」と言われれば、「空間をつくるため」に違いありません。
 
 ということは… 我々「建築屋」は「空間屋」ということになりますね。
中島桂一