2018年3月13日火曜日

カッコよくて高性能ならいい家?

 寒暖の差が激しいですね…季節の変わり目、くれぐれもご自愛ください。
 家を新築して引越しをされる方も、この年度替りの時期に多いことと思います。

 これから家づくりをお考えの誰もが、「いい家を建てたい」と望んでいます。ところで、「いい家」というのは、具体的にはどんな家のことなのでしょうか。

²  柱や梁が太くて頑丈そうだ。 しかも総桧造りだし。
²  広くて部屋数もたくさん。設備も充実していて余裕ね。
²  デザインが素敵!
²  大工さんの腕がすばらしい。
²  耐震性能が良いから、地震が来ても安心だ。
²  高断熱高気密に太陽光発電。とっても省エネなんだ。
²  自然素材や県産材にこだわり、健康的でエコなんだぜ。
たしかにこれらは良い住宅の条件のひとつかもしれません。
しかし、もし、これらの条件を「本」に例えるなら、紙質が良いとか製本がしっかりしている、表紙のデザインが良い、活字が大きくて読みやすい、出版社が地元だ、匂いの少ないエコインクを使った…といった部類の話です。
通常の意味で「良い本」とは、そこに書かれている内容が良いということだと思います。つまり、ストーリーが感動的であるとか、自分の悩みに的確に答えてくれているとか、大切なことを教えてくれているなどなど…
住宅ならば、その家で「家族が幸せに暮らせるか」ということだと思います。

いくら高級な材料を使い、近代的で便利な設備を備えた広くてかっこいい住宅でも、陽当たりや風通しが悪くて健康を害したり、使い勝手が悪くてストレスがたまったり、落ち着ける場所がなくてイライラが募ったり、コミュニケーションが取りづらくて家族がバラバラになってしまうような環境であったとしたなら、それは悪い住宅です。むしろ、あちこちにガタがきているような古い家であっても、そこから立派に巣立った子供達が、盆や正月には孫を連れて里帰りしてくるような「田舎の実家」の方が、はるかに良い家だといえるでしょう。
 自分や家族を本当の意味で大切にしてくれる家。つまり、幸せな家庭生活を営むためにふさわしい環境をつくり出してくれる家が、「いい家」であると言えます。
                          住宅設計士 中島桂一